『RUSH BALL 2017』初日のトリを務めるのは、MONOEYES。会場にはラストの一瞬まで楽しみ尽くそうという観客が押し寄せる。すると間髪入れずに「大阪やっちまおうぜ!」(細美)のひと言から、クラップ発生で『When I Was A King』のロケットスタートだ。そしてさらに彼ららしい美しいメロディとハーモニー、高ぶるリズムが織り成すナンバーが続き、次は『Free Throw』へ。歌うようなギターに気分を押し上げられると、もっと深く“MONOEYEワールド”へ突入。緩急のあるドラマティックな世界が広がる『Run Run』と『Get Up』を連続投下して、一気にハートをわしづかみにする。力強さと柔らかさを兼ね備えたその音楽は4人ならではの温かさだ。
またMCでもアットホームなムードが…。まず細美の「ちょっと酒飲んでいい?」から始まり、いつもの切れ味鋭いコメントも挟みつつの「俺たちは今、人生の夏なんだろう」という泣かせる言葉。チャーミングなツンデレに翻弄される。そして細美曰く「大切な夏の思い出を詰め込んだ」という『Two Little Fishes』を奏で出す。涙腺をも刺激するようなこの優しいナンバーには、堪らなく幸せな気分に…。加えて続く『My Instant Song』ではシンガロングも響き渡り、今日一番の一体感。「大阪愛してるぜ!」(細美)の言葉が、胸の中に熱いものが広がる速度を加速させる。
しかし、それで終わる彼らではない。『明日公園で』では爽やかさとスピード感100%。言葉が体を突き抜けていくようだ。そしてラストは『グラニート』をセレクト。ポジティブなメッセージがそっと観客の背中を押し、最後の曲にまさにぴったり。見れば誰もが充足感たっぷりの表情を浮かべ、初日のライブは終了を迎えた。
…が、こんな“いい夏の夜”を簡単に終わらせるわけにはいかないと、メンバーがアンコールで再登場! 「やべ~。すげ~楽しかった!」と細美が満面の笑みを浮かべる。そして「夏の終わりだぜ、最後に花火を打ち上げようか?」と、最後の最後は、Scottがボーカルをとる『Borders & Walls』を! ハイスピードの曲にのせ、踊る、跳ねる、歌うのお祭り騒ぎ。しかも曲後はなぜか「せーのっ」(細美)に合わせて全員で雄叫びをあげることに…。さらにさらにその「お~!」の直後には、恒例の打ち上げ大花火がドカン! これを大団円と呼ばずして何と呼ぶ、というパーフェクトなフィニッシュとなった。
text by 服田昌子
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
SET LIST
めちゃくちゃ良かった。とにかく最高だった。もう、その言葉しかない。以前にライブは観た事あるが、完全に自己更新されたライブであった。今春、まさかのメジャーデビューを発表。確実にバンドが勢いに乗っているため、リハの時点から異様な気合を感じていた。それもあってか1曲目『Such a sweet lady』も原曲ではスイートソウルなナンバーだが、既に荒れくれている。
極め付けは早くも2曲目『精神』。ボーカル4人にギター、ベース、ドラム、キーボードが1人ずつの計8人だが、気づくと5人が竿を持っている。すなわち、いつの間にかトリプルギター&ダブルベース! トゲトゲヘルメットを被り、鋲ジャンを着たワトソン(vo)が叫ぶ。『精神! 精神! ボロボロ〜!!』。そんな身も蓋もない歌詞が、たまらなく響く。ワトソン以外のボーカルである山ちゃん、うーちゃん、先輩はギター、ベース、キーボードをかき鳴らし、キーボードの小林4000は何故かギターをかき鳴らす。もう、その無茶苦茶さに頭も心もグッチャグッチャにされてしまう…。
3曲目『UNCHAIN』に入る前のMCで、山ちゃんが「日常という鎖から解き放たれようぜ!」と言っていた。どれだけ日常で嫌な事や悲しい事があっても、一瞬で忘れさせてくれるのがパンクロックの定義だと個人的に想っている。まさしく、この日のどついたるねんはパンクロックであった。
終盤の『人生の選択』では懐かしの『夏の日の1993』を歌ったり、『RUSHBALL』全出演者の名前をラップ調に叫ぶ。一見無駄だと思われる事を全力でやられる事に、どうも人間というのは弱い。この日のどついたるねんは、そこも見事に突いてきていた。
そして、何よりも楽曲が良い。ラスト手前の『マイベストフレンド』はスカ調であったり、ラストナンバー『わたるちゃん2』は鍵盤のメロディーがとてつもなく気持ち良かったり、ただただ破壊的なだけではない。
実はセットリストが本番ギリギリまで発表されず、レポ担当としては冷や冷やした。が、終演後、完全燃焼して楽屋で倒れこむ彼らの姿を見て、改めて最高のライブだったなと心から感動した。本当にいいものを観させてもらった。
text by 鈴木淳史
photo by 河上良
SET LIST
夜の闇色がどっぷりと会場を染める頃、メインのステージ10番手に登場した[Alexandros]はトリを前にしてクライマックスかと思わせるほどの壮大なステージで楽しませてくれた! 川上洋平(vo>)はステージに登場するやいなや、マイクに向かってもっと大きな声を寄こせと観客を煽り、「Are You Ready?」と覚悟を求めると、1曲目『ワタリドリ』でライブスタート。初っ端からライブの定番曲で会場のテンションを高めていく彼ら。白井眞輝(gt)の流麗なメロが楽曲に開放感を生み、川上の伸びやかな歌声はサビに入った瞬間に爆ぜるような勢いを放つ。眩い閃光が煌めくなか、次曲『Girl A』では磯部寛之(b)の鋭角なリズムがオーディエンスの拳をより高い位置へと誘う。4人の放つ轟音が体を突き抜けていく瞬間の心地よさったら…♪ かと思えば、続く『Kaiju』では怪しげな浮遊感を演出する白井のメロ、庄村聡奏(ds)のスリルの迫るようなリズムが楽曲の世界観によりはっきりとした輪郭を形作っていく。
「まだまだ踊りたりないやつ、暴れたりないやつ、もっとこっち来い‼」と観客をはやしたて、『Kick&Spin』『Starrrrrrr』と、これまたライブでも盛り上がり必須の強靭なナンバーを立て続けに披露! 疾走感高まる楽曲に魅せられ、観客はともに歌い、手を高く掲げてメンバーの音に応えていく。ラスト曲の前には、持ち時間が少ないから…と『Adventure』の一小節をアカペラで聴かせるレアなシーンにファンは歓喜の声を上げる。そして、「今年の夏、いろんなフェスでやってる新曲だけど、歌えますか? 踊れるかー?」と、新曲を最後に披露。緩やかに上昇していく楽曲は夏の終わりを感じさせるようで、ライブが終わると大きな満足感と少しの哀愁が心を満たしていた。
text by 黒田奈保子
photo by 田浦ボン
SET LIST
「パワーポップ大阪代表!ナードマグネットだ!この野郎!」とお馴染みの挨拶をキメて、アグレッシブにライブをスタートさせたのはナードマグネット。けだるい憂鬱な気分から解放してくれるような甘酸っぱい楽曲『ウェンズデイ』に続けて、センチメンタルなナンバー『MISS YOU』を投下。いつか味わった儚くも淡い気持ちを呼び覚まし盛り上げ、居てもたってもいられない気持ちにさせられる。
須田亮太(vo&g)が「さっきSHISHAMOもライブで聞いてたけど、今日、ひとりぼっちで来た人?」と、問いかけるとフロアに続々と手が上がる。それを見て、「SHISHAMOよりひとりで来てた人、多くない?ひとりぼっちの方が楽しめる曲があります。ひとりぼっちで聴いた方が力が発揮されるような曲を作っていきたいと日々思っているんです」と、まっすぐな表情で語った須田。すかさず、ひとりぼっちの男に奇跡が訪れる“ぼっち讃歌”『プロムクイーン』をぶつける。
さらに、高校三年生の頃に夏休みに『RUSH BALL』へ遊びに来たエピソードを語った須田。「夏休みが終わって学校が始まると、進学校やったので周りの友達たちはみんなずっと勉強してたから真っ白なんです。だけど僕だけ『RUSH BALL』で真っ黒になってて、すごいひんしゅくをかったのを覚えています。13年前のことですけど、今になって間違ってなかったなと思います!」と、自身もひとりぼっちだった過去を振り返り、だからこそ今がある喜びを語る。そして「高校生の人も観てくれてるかな?大人なったらライブハウスで乾杯しようぜ!世の中、なんとなかなるもんやから!」とメッセージを送り、ナード屈指のアンセム『Mixtape』を披露。日が暮れて涼しくなった野外に“ああ この夜は僕らのもの”と高らかに歌われるとグッと心を揺さぶる。「また必ず、ライブハウスで会いましょう!」と言い放ち、疾走感あふれる『ぼくたちの失敗』でフィニッシュ。「メインステージの[Alexandros]観に行くぞーっ!俺は“ワタリドリ”じゃー!」と言い残して、フロアにダイブした須田は熱くなった観客に運ばれていった。
text by 大西健斗
photo by Hoshina Ogawa
SET LIST
日没直前のベストタイム、DJのトラックに合わせてダンサー2人がまず登場。始まる前からワクワク感が半端ない。そしてそんな空気を受けて立つとばかりに、最新アルバムの曲『Mix it Up』から超攻撃的にスタート。腹に来るベースとドラム、さらに鋭利なボーカルで会場を切り裂いていく。しかも攻撃の手を緩めることなく、『PULSE』『The Live』と続け、KenKenのベースプレイやATSUSHIのフラッグを炎のように使ったパフォーマンスなど、息つく暇なく見どころ&聴きどころを展開する。しかも「野郎ども頭振れ!」のKjの煽りに、スタンディングエリアぎっしりの人が一斉にヘドバン。大きな渦に巻き込まれているようだ。
そして気づけばすっかり夜に…。そんな中、Kjが口を開く。「ゲートを出たらうまくいかないことも我慢しなきゃいけないこともあると思う。(中略)でも、フェスやライブハウスに足を踏み入れたらみんな一緒。音楽上では平等です。飛び切りの思い出を作って帰ってください」
そんな熱いメッセージと共に響きだしたのは『Ode to Joy』。その喜びに満ちた力強いサウンドは、心を解放してくれるかのよう。さらにLEDライトを使ったファイヤーダンスのようなDRI-Vの舞もあいまって、非日常の異空間へと導く。心がふわふわし始めると、今度はガラリとムードを変えて『Jump』。どこか叙情的にも聴こえるKjのラップは胸の奥をくすぐる。…が、「タオル持ってんだろ?」のひと声からは、会場いっぱいに回されるタオルの花が咲き誇る。実に壮観な眺めだ。曲名どおりにジャンプも連発で、いよいよラストの一曲へ。
暗転したステージでKjが、生きる価値を見出せるのは皆のおかげと、まず感謝を述べ、「じじいになってもばばあになっても音楽を愛する気持ちを捨てないで生きていってください」とついにキラーチューンの『Fantasista』が鳴り出す。当然、おなじみのあの“Wow Wow Wo”の大シンガロング! 最後の最後まで鳥肌ものの景色を生み出し、記憶に強くその存在を刻み付けて、まさにあっという間、夢の中のような約30分間に幕を下ろした。
text by 服田昌子
photo by 河上良
SET LIST
「『RUSH BALL 2017』、楽しんでいきましょう!」という三島(b)の咆哮から、久野(ds)の叩き出す壮絶なビートにブレイクがキマりまくる『熱源』で、cinema staffの『RUSH BALL』初ステージはスタート。少し陽が落ちた泉大津の大空に、飯田(vo&g)の澄んだ歌声が鳴り響いていく。そして、そのビートをつなげたまま「俺たちが岐阜県cinema staff、始めます!」(三島)と、彼らの名を知らしめたアニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマ『great escape』をブッ込み、ノンストップで突き進む! 続けざまの『エゴ』といい、フルドライヴするベースラインが、獣の鳴き声かのようなギターが、轟音のサウンドウォールが、オーディエンスに豪雨のように降り注ぐ。「これから俺たちの魂の歌を歌います」(三島)と始まった『theme of us』でも、縦横無尽にステージを駆け巡る辻(g)のエモーショナルなギターは加速度を増す一方だ。
「『RUSH BALL 2017』 、出られてホントに嬉しいです。そして、この時間に集まってくれてありがとう。今日は25分しかないんで、がむしゃらにやって爪痕を残すとかじゃなくて、もっと深いところで、どうにかみんなの記憶に残したい。ちょうど太陽が落ちてきて、この時間に合うんじゃないかと思います。今日はどうもありがとうございました、cinema staffでした」(飯田)
まさに、この飯田のMCが今日の全てで。徹底的にブッ倒すライブ無双のシネマとしてじゃなく、きっちり楽曲で人の心を動かせるバンドとして、『RUSH BALL』に挑んだシネマ。「ありがとう、また会おう絶対」(飯田)。感情直結のギターが物語をドラマチックに彩ったラストの『僕たち』は、夕暮れどきのATMCに新たな絶景を作り出した。
text by 奥“ボウイ”昌史
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
SET LIST
『RUSH BALL』常連組のBIGMAMA。現在のメンバーになって10年。貫禄という言葉を軽々しく使うのも嫌なのだが、完全に大きなステージが似合っていた。大きなステージに辿り着いたという少し前の彼らではなく、当たり前の如く戻ってきた感じ。1曲目は、『ヒーローインタビュー』。“王子”の愛称で知られる金井政人(vo)だが、ある意味”ヒーロー” にも映り、観客の少年少女たちはキラキラと目を輝かせて、彼を見つめる。軽快なポップ感は少し涼しくなってきた泉大津にピッタリだ。東出真緒のバイオリンの響きはメロウでもあり、エモーショナルでもあり、振れ幅の広さを感じさせてくれる。
『ファビュラ・フィビュラ』では金井が観客に「めちゃくちゃ、いいもんを見せてあげる!」と語りかける。観客は手を上げたり、タオルを掲げたり、それぞれのやり方で応えていく。壮大なクラシックの音色に包まれた『荒狂曲”シンセカイ”』を挟み、『神様も言う通りに』へ。金井が今朝大阪の友達から子供が産まれた報告をメールで受けた話をして、そして『たった3秒あれば僕達は未来を変えて行ける』という歌詞を丁寧に歌う。観客全員が口ずさむ光景を見る事で、そのメッセージソングとしての強さを感じる事が出来た。
「全然終わりたくないけど、終わります!」と金井は叫び、ラストナンバー『MUTOPIA』へ。ステージを降りて、観客へ少しでも近づこうと柵に乗りかかったり、走ってハイタッチを求めに向かう姿は、やはり”ヒーロー”。最後まで別れを惜しむかのように手を伸ばす観客たちに、普段の表情とは違う少しヤンチャな表情で笑いかける姿は頼もしかった。
text by 鈴木淳史
photo by 田浦ボン
SET LIST
メインステージのSHISHAMOから急展開、ゴリゴリのメタルコアサウンドで野外ステージを“ライブハウスATMC”へと代えたのがCrystal Lake! ダースベーダーのテーマ曲をSEにして登場したメンバーは1曲目『Matrix』から重厚感たっぷりな極悪サウンドを放っていく。Ryo Kinoshita(vo)のデスボが轟き、オーディエンスはウォールオブデス、モッシュ、ウィンドミル、ダイブ、2Stepと暴れに暴れ、彼らの音に呼応していく。続く『Mercury』、早々にフィールドに飛び込んだRyo Kinoshitaの姿を合図に、Yudai Miyamoto(gt&vo&key)とShinya Hori(gt)の2人も狂騒感たっぷりのサウンドを放っていく。
MCではヘビーミュージックというジャンルへの偏見を捨て、性別年齢関係なくサポートしあってライブを楽しもうと観客を誘い、「夏祭りの準備はいいですか?」と、『Rollin’』へと続く。よりスピードを上げた楽曲はハードながらもポップな面も持ち合わせ、初見の観客さえも容易に巻き込んでいく♪ また、今年がRUSH BALL初出演の彼ら。メンバー自身もステージを存分に楽しんでいるようで、「このスタイルを突きぬいて。ここまで来たらアッチに行きたくないですか?」と、来年はメインステージに昇りつめたいと誓いを立てる。
そしてライブは早くも後半。『Black And Blue』ではハードな楽曲の中にも美麗なメロディを持つ“聴かせる”楽曲で観客を魅了。ラスト『Prometheus』では、スピード感を維持しつつもバンドの多彩さをしっかりと見せつけてくれた彼ら。次のライブハウスにしっかりとバトンを繋ぐステージングでRUSH BALLファンを魅了していった。
text by 黒田奈保子
photo by 河上良
SET LIST
4年連続のRUSH BALL出演となったSHISHAMO。シート禁止エリア後方まで隙間なくつめかけたオーディエンスの数で、その人気っぷりがわかる。RUSH BALLTシャツに短パンの宮崎朝子(vo&g)、トレードマークのオーバーオールに身を包んだ松岡彩(b)、SHISHAMOTシャツに短パンの吉川美冴貴(ds) といつも通りのいでたちで登場した3人。「ラッシュボールおんな!ラッシュボールおとこ!ラッシュボールぜんいん!」とお馴染みのコール&レスポンスもキュートにきまり、『好き好き!』のイントロのギターリフが弾けると大歓声が。初っ端から笑顔全開で演奏する3人からは、4回目の登場で成長を遂げた貫禄がにじみ出ていた。
「かわいいー!」と会場から声があがると「ん?え?」と何度も言わせた挙句、「知ってます」とクールに返す宮崎のツンデレなMCも毎度楽しい。「じめっとしてんなぁー!」と湿度がツライ様子の宮崎だったが、「大阪の暑さはじめっとしてる系だからっ」と大阪出身の松岡がすかさずフォロー(笑)。そして、「RUSH BALLはSHISHAMOにとって特別なフェスなんですよ!」と4年前のATMCで、スタッフとして働いていた松岡をスカウト(ナンパ)したことが新生SHISHAMOの始まりだったという話を。1年に一回、RUSH BALLでこのエピソードを話すことで、初心に帰って奮起しているのかもしれない。「RUSH BALLがなかったら今のSHISHAMOはないと思います。今年も出られてうれしいです!」と感謝の気持ちを語った。
新曲『BYE BYE』では彼女たちの演奏風景がモノクロとなりビジョンに映し出される。カッティングギターとうねるベースラインがクールなサウンドと相まって超絶カッコイイ!爽やかなサビや繊細な歌詞などバンドの懐の深さを見せつける名曲。
後半は、恒例の“夏フェス”定番曲を。『タオル』では、後方エリアまでタオルを回す光景が壮観だった。ラストは、ヒットシングル『明日も』を披露。高音のブレなさなど、安定感ある宮崎のヴォーカルは圧巻だ。昨年のトリ前に続き、今年は明るい時間帯でまた違った表情を見せてくれた3人。アグレッシブかつパワフルな演奏で、ロックバンドとしての成熟を感じさせるステージだった。
text by 岡田あさみ
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
SET LIST
リハーサルから「『RUSH BALL』!」「大阪!」のコール&レスポンスをブチかましATMCをアゲまくったのは、今年が初出演となるWATARU。自らに与えられた全ての時間=チャンスに目いっぱいオーディエンスに訴えかける前のめりな姿勢が、何ともグッとくる。「芝生に座ってる人!」「来いよー!」というコール&レスポンスから(笑)、『Hawaii』へと自然と溶け込んでいくレゲエ/ヒップホップをベースとした心地いいバンドサウンド。そして、「ここに集まってるみんな最高!」と小麦色の笑顔を爆発させながら、いつの間にか『Hey Girl』へとスイッチ。なんて書くと極めてスムーズに見えるライブだが、アジテーションに費やした時間はここまでに約22分。持ち時間は25分(笑)。「ヤベーあと3分しかねーぞ!(笑) これからもWATARUをよろしくお願いします!」と披露した『一番星』ではステージを降り、オーディエンスに自らのアルバムをプレゼント。さらには会場を駆け抜け後方の観客にもアピールするなど、ライブのフォーマットなどお構いなしのフリースタイルなパフォーマンスは、乱立するライブイベントの中でいつの間にか陥っている、“いつかどこかで観たライブ”とは別モノの貪欲さと情熱に満ちている。
最後は撮影用に設置されたタワーによじ登り、「みんなマジ最高だったよ! ありがとう!!」と大声で叫んだWATARU。己の音楽を届けることを諦めない執念にも似た熱い想いは、真夏の泉大津フェニックスにしっかりと足跡を残した。
text by 奥“ボウイ”昌史
photo by 田浦ボン
SET LIST
スリーピースながら壮観な迫力で観客を圧倒したのは、結成20周年のアニバーサリーイヤーを迎えているACIDMAN。「この一分、一秒は二度と戻ってこない。俺たちのものでもあるし、お前たちのものでもある。最高の瞬間にしましょう!」と大木伸夫(vo&g)が口火を切って、『造花が笑う』でライブをスタート。そのまま「FREE STAR」が畳みかけられると、うねりをあげる佐藤雅俊(b)のベースと浦山一悟(dr)が打ち鳴らすビートに合せて、グングンと上昇していく会場の高揚感に身を任せて踊る観客たち。
「2004年…。初めて『RUSH BALL』に出させてもらった。13年前の気が遠くなるような遥か昔の話です。2006年…。いろいろなフェスでトリをやりたというのがミュージシャンの夢なんだけど、俺たちは初めてここ『RUSH BALL』でトリをやらせてもらった年。それでも、気が遠くなるような昔の話です」と、イベントと共に歩んできたともいえるこれまでの歴史を感慨深そうに振り返る大木。続けて、「でも、この宇宙は138億年前にできて…。138億年前から形を変えて、俺たちは人間と人間になって、今こうして繋がれています。奇跡だと思います。この奇跡、もっともっと素晴らしいものにしませんか?」と投げかけ、新曲『ミレニアム』を。つきぬける大木の歌声が聴く者の胸を貫き、晴れ渡った大空と芝の生い茂る泉大津の大地いっぱいに広がっていく。そして、爆裂アンサンブルを轟かせ息が切れるまで歌った『ある証明』から一転。渾身のバラードへと続く。
「人はいつか必ず死ぬ。今は最高に楽しくても、みんな歳をとって、いつかもしかすると怪我や病気で死んでしまうかもしれない。だからこそ、生きていると感じられる瞬間はかけがえのないことなんです。命を大事にしてください。楽しくなくったっていい。つまんなくたっていい。幸せかどうかは自分で決めることで、周りが決めることじゃない。この命が、かけがえのないものだと感じながら、次につなげていこう。そうすれば、世界がもうちょっと良くなるんじゃないかなと思っています」と大木。20年、“生と死”に向きあい歌い続けてきたからこそ生まれる説得力ある言葉で、内に溢れる想いを語り投げかけ、祖母の死がきっかけとなり生まれたという『愛を両手に』を披露。心の奥底の深いところにある感情に気づかせてくれる楽曲でステージをしめくくった
text by 大西健斗
photo by 河上良
SET LIST
RIZEの興奮が冷めやらぬ中、穏やかなSEと共に、たかはしほのか(vo&g)、ゆきやま(ds)、そしてサポートの前川知子(b、ナードマグネット)が登場。完全なる初見であったが、1曲目『ジョニー』の『ばかばっかのせんじょうにギターを持って ばかばっかのせんじょうにいのちを流し込む』という歌い出しにゾクッとする。弱冠19歳のたかはしが知っているかどうかはわからないが、思わず大昔のアイルランド民謡の反戦歌が勝手に頭に浮かぶ。透き通った声ながら、『トランジスタラジオ』ではシャウトも響き渡る。全体的に音もざらついており、1曲聴くごとに印象が変わっていく。牧歌的でもあり、グランジでもあり、どんどん想像が膨らむ。
MCでのたかはしの声はか細く、たどたどしく、だからこそ耳を真剣に傾けて何を伝えようとしているか必死に聴き取ろうとしてしまう。いつも裸足だからと途中で靴を脱いだり、会場について「空と海と草原と山という全ての原点が詰まっている」と独特の表現で語ったり、前川にベースを頼んだ事でパンクロックのような演奏になったと述べたり、そして最後には「よくわからないですけど、ありがとうございました」と煙に巻いたり(本人に全くそのつもりはないだろうけど)、全ての行動言動が気になって仕方ない。
ラストナンバー「はしるこども」では、ゆきやまがドラムを叩き込み、たかはしは一心不乱にギターをかきむしっていく。その衝動的な佇まいに、つい泣きそうになってしまう。若さゆえの荒々しさが、たまらなく美しく映った25分であった。
text by 鈴木淳史
photo by Hoshina Ogawa
SET LIST
RUSH BALL常連組、RIZEの登場アナウンスが鳴るだけで会場からは大きな歓声が沸き立つ。1曲『ONE SHOT』から、脳みその裏の裏までビリリと響かせるようなパンチのあるサウンドが響いていく。“RAP”の文字が記されたTシャツを着たJESSE(vo&g)は畳みかけるような矢継ぎ早なラップを投下! 続く『Good Day』、寡黙ながら鋭角なリズムを打ち鳴らすNobuaki(ds)、リズムもステージングもアグレッシブなKenKen(b&v)と、2人の個性ある音がオーディエンスをご機嫌に躍らせていく。
「TKC、TOKYO CITYから来たメンバーと…。Let’s Party Mother F●cker!!!」と叫ぶと、3曲目『TKC』へ。毒気がありつつも終始ご機嫌なサウンドを無我夢中になって追いかけるオーディエンスたち。さらに『PARTY HOUSE』では「アーティストやなんちゃってファンはお帰りください。バンドマンとライブ好きな馬鹿野郎!集まってこいや!」と観客を煽り、切っ先鋭いサウンドで観客と真っ向からぶつかっていく。
ステージは後半。JESSEは乗り越えられない壁、ぽっかりと空いてしまった穴について、無理に乗り越えなくてもいい、空いた穴はそのままのほうがいつでも思い出すことができると語る。そして「Kのためにやります」と、『日本刀』へ。Pay money to my painと共にライブで鳴らしたこの楽曲。NobuakiもPTPのキャップを被り、同志へ捧げるように打ち鳴らすサウンドに、会場からは大きな歓声が沸き立つ。そしてkenkenのベースがさらに加速したところでラスト曲『カミナリ』へ。ファンの1人をステージに呼び込み、RIZE+1の特別編成でのステージに! RIZE愛溢れるファンのパフォーマンスにメンバーもニヤリと気分上昇♪ 最後の最後までライブバンドの楽しさを伝えるステージはあっという間に幕を閉じた。
text by 黒田奈保子
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
SET LIST
日差しがキツくなってきたATMC。夏にぴったりな心地よいギターの音が聴こえてくると思ったらnever young beachの5人がサウンドチェック中。フォーキーなデヴェンドラ・バンハートのSEと共にメンバーが登場すると、「どうもーやっほー!!楽しんでくれみんなー!」と初めてのRUSH BALLということもあり、全力かつゆる~く煽る安部勇磨(vo&g)。前半は、自己紹介的に『どうでもいいけど』『あまり行かない喫茶店で』などの鉄板曲をたたみかける。暑ければ暑いほど聴きたくなるようなトリプルギターのアンサンブルに身を委ね、みんな思い思いに体を揺らしている。安部も時折腰をくねくねさせながら気持ちよさそうに演奏。「調子はどうですかみなさん!」シャウトも飛び出し、ゴキゲンなサウンドに拍車がかかる。
『夏のドキドキ』では、よく通る安部のヴォーカルの独特な空気感が際立ち、「8月の空 気持ち良すぎて抑えきれない~」の部分を熱唱する姿は、まるで残り少ない夏を惜しむようだった。
「さっきトイレでバッタと目が合っちゃってビックリした!」というほっこりMCで笑いと癒しを与えてくれたあとは、『SURELY』から後半へ。開演前の日差しが緩み、涼しい風にのるヴォーカルがどこまでも届くよう。この若者5人から溢れ出てくるのが信じられないほどの哀愁を帯びた極上のポップサウンドが染み入る。すぐにでもビールがのみたくなる!
「はじめてのRUSH BALLなんです!みんなありがとう!」「寂しい!」「来年も出るからさみしくない!」とメンバーそれぞれが感想を述べたあとは、みんなのハンドクラップとともにきらめくギターのフレーズが降り注ぐ。躍動感たっぷりなラスト2曲の選曲も完璧。ピースフルな空気でATMCを満たしてくれた5人だった。
text by 岡田あさみ
photo by 河上良
SET LIST
「『RUSH BALL』いけますか〜!? Mrs. GREEN APPLEですよろしく!」との大森(vo&g)のご挨拶から始まったミセスのライブは、いきなりのアンセム『うブ』で、これにはオーディエンスもたまらずハンズアップにジャンプ&ジャンプ! しょっぱなから藤澤(key)&髙野(b)のシンセ2名体制で、海外のシーンのトレンドを巧みに取り込んだポップソングをバキバキに鳴らし、泉大津フェニックスをロックオンしにかかる5人。続く『speaking』では髙野がベースにスイッチ、促さずともクラップが巻き起こる会場に「完璧です!」と大森もご機嫌だ。メンバーのアクションに追従するお客さんのリアクションはライブ慣れしてる感アリアリで、山中(ds)の扇動するビートにベースラインが絡みつく『VIP』でも、「さすが『RUSH BALL』!」と大森がこぼすのも納得の一体感。とは言いつつも、オーディエンスをさらりとフックアップする大森のフロントマンとしての手腕と華も確かなものだ。「好きに踊る準備はできてますか!?」(大森)と、ブレイクビーツなイントロがクールな『WHOO WHOO WHOO』に突入すれば、灼熱の泉大津がさらなる沸点へと到達!
MCでは「最高に気持ちがいいです、ありがとうございます! 2年前に出させてもらってぶりで、気持ちがいっぱいです。ホント嬉しい」と喜びを噛み締める大森。そして、後半戦に披露したドラマ『僕たちがやりました』/アニメ『ナナマル サンバツ』のWタイアップ曲でもある『WanteD! WanteD!』は、発売前の新曲にも関わらず口ずさむ人もちらほら。楽曲の持つ浸透力とそれを届けるバンドの推進力を、2年ぶりの大舞台でまざまざと見せつける。
「今年はたくさんフェスに出させてもらったんですけど、メインステージは初めてなんです。『RUSH BALL』でそこに立てることを、本当に幸せに思います。“この気持ちを忘れちゃいけない”と思って、メジャーデビューのときに書いた曲を歌ってもいいですか?」(大森)
ラストの『StaRt』を口ずさむオーディエンスは、先ほどを遥かに上回る。デビュー時にATMCに立ってからの2年の月日を、バンドの進化を、満場の泉大津フェニックスに刻んだMrs. GREEN APPLE。鳴り止まない拍手に深々と頭を下げ歓喜の余韻に浸る5人の未来が、楽しみでならないステージだった。
text by 奥“ボウイ”昌史
photo by 田浦ボン
SET LIST
2015年、RUSH BALLのプレイベント「RUSH BALL☆R」に出場から2年を経て、ATMCに登場。2番手をつとめたのは、大阪アメリカ村からやってきた愛はズボーン。
ステージに現れるや否や、「RUSH BALL」のロゴをパロディして作ったTシャツを金城昌秀(g&vo)がフロアに投げ込みプレゼント。「今みたいに、これから色んなものが飛んできます!全部ゴミじゃなくて、大事なものなので受け止めください!ゴミは残さず、記憶に残るライブをしようと思います!」と切り出し、白井達也(b)と富永遼右(drs)とで向き合い重たいサウンドを鳴り響かせると、遅れて異様にデカいロボットがステージに現れた。名は“図画工作”というらしい。ステージ中央でポーズを決めるとクラッカーが飛び、挨拶代わりに『愛はズボーン(Short Ver)』を投下。のっけから特大のクラップと大合唱を巻き起こし、ロボの中から身長187cmのGIMA☆KENTA(vo/&g)が登場!……と、何の脈略もない展開だけれど、なぜか興奮して思わず“うおぉー!”と声を上げたくなる遊び心で会場をひとつに。
続いて、ツインボーカルが効いた『MAJIMEチャンネル』。金城が「ここに出られたからって売れるわけではない!」と胸の内を歌詞に差し込み、“これさえあればもう安心なんて/この世に無いから地獄”と歌う。ついに出演を果たした「RUSH BALL」のステージで、広い野外でのライブに喜びを露わにしながらも、浮き足立つことなく、地に足つけて踏ん張りながら、おさまりのつかないような感情をありのままに届けていく姿が印象的だった。
決してお笑いではなく、MCで観客を引き込んで引き込んで、楽曲を際立たせる流れが痛快だった『ひっぱられる』。『愛はズボーン』の曲中では、大量の風船と特大のバルーンが撒かれ、観客の頭上で鮮やかに舞うクライマックスも。ラストは最新シングル「ゆ~らめりか」で、緻密に練り上げたゴリゴリのサウンドで躍らせてステージの幕を閉じた。笑えて心躍って、エモーショナルで、ガツンと聴かせる。ライブの醍醐味を詰め込んだ、愛はズらしいエンターテイメントをみせてくれた。
text by 大西健斗
photo by Hoshina Ogawa
SET LIST
12:30の定刻どおりに姿を現したメンバー。気になる布陣は、ギターに渡邊忍(ASPARAGUS)とフルカワユタカ(ex.DOPING PANDA)、ドラムにMasayuki Yamazaki(COUNTRY YARD)と豪華だ。そして「『RUSH BALL』久しぶり! あ・ば・れ・ろ~」(LOW IQ 01)と、グッドメロディの『Snowman』でスタートダッシュ! 続けて『SWEAR』では疾走感をプラスして伸びやかなボーカルが乗る突き抜けるサビに夏を感じさせ、加えてSUPER STUPID時代から今も色あせない 『WHAT'S BORDERLESS』へ。そのスピード感とうなるギターに歌声の温度も上昇する。当然、会場もヒートアップ。あちこちからさまざまな声がかかるが、そこは「はい、バンド間違えてますよ~(笑)」 (LOW IQ 01)と余裕のリアクションでリラックスさせ、「いい感じだね、どんどん来いよ!」とひと煽り。そこから5月に発表した約3年ぶりのアルバム『Stories Noticed』のナンバー『Delusions of Grandeur』へ。煽りどおりに挑発的なイントロで始まるこの曲の、跳ねるビートや展開して高速になる曲調に引っ張られ「オイッ!オイッ!」コールも起こる。だが、そんな緊張感は次の『SO EASY』の肩の力が抜けた小気味良さで多幸感へとチェンジ。かと、思えば再びテンポアップして彼ららしいメロディアスさをまとった『Makin' Magic』で盛り上げ、会場は完全に5人のペース。笑顔の花も満開になる。
またMCでも大人のゆとりは全開で「楽屋で(今日の)ポスター見たら、46歳で最年長。こんなステキな46歳いる? 俺、サイコー!」(LOW IQ 01)と、偽りなくカッコいい。
そんな大人の魅力を見せつけるかのように、ミドルテンポの『WAY IT IS』ではどこか憂いも感じさせつつも音楽の楽しさもしっかりと伝える。そしてラストは懐かしい曲『Little Giant』で、ダメ押しのひと騒ぎ。キレッキレッのドラムとギターにクラップが重なって形を成すナンバーは、4つ打ちのサビで会場全体が完全燃焼。…と思いきや、最後にはLOW IQ 01のドラム披露というおまけまで! まさに聴きごたえ十分のアクトとなった。
去り際「俺、音楽やってて良かった~」の言葉を残したカッコいい大人・LOW IQ 01、そんな大人の男を見て「あのタレ目がかわい~」と“ピチピチ”の女子。世代を超えてカッコいいものは、いいのだということを再確認!
text by 服田昌子
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
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ATMCのトップバッターで登場したのは'14年の結成以来、さまざまな大型フェスへの出演など注目度の高さで知られる4人組DATS。サンプラーから流れるハンドクラップのSEと共に現れると、打ち込みから音を重ねていくオープニングで、これから何がはじまるんだろうという期待感を煽る。「25分しかないけど最高の想い出にしようぜ!」と杉本亘(vo)。上手からドラムセット、各自シンセやサンプラーも担当するベース、ヴォーカル、ギターが横一列に並んで魅せるスタイルがなんともクール!「SNS世代のリアルな日常」を表現したMVのシニカルさがライブではエモーショナルに爆発する『Mobile』では、腰から動かされてしまう。初見らしきオーディエンスからは「これやばい!かっこいい!」という声が聴こえてくる。3曲目『Netflicks』では、ハンドマイクでフロアに降り立つ杉本。先鋭的なダンスビート・ミュージックでありながら、熱量の高いライブパフォーマンスで、シンプルに音を楽しむ4人が印象的だ。
中盤では、「ここにいるみんなとセッションしたい!手拍子ください!」と杉本や伊原が上手に移動。フロアタムやシンバルを叩いたりと4人でのドラムセッションが繰り広げられ、自由なパフォーマンスで沸かせる。ラストは、「最後の曲です!一緒に踊りませんか」と緩急をつけた展開で魅せる初期ナンバー『Candy girl』も披露された。緻密に構築されたビートにのっかるスリリングな生っぽさが新たな魅力となる彼らのライブ。6月に発売されたデビュー・アルバム『Application』中心のセットリストで、次世代のシーンを担う存在感をしっかりと見せつけた。
text by 岡田あさみ
photo by 河上良
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‘13年のATMC以来の出演となったMY FIRST STORYはバンドの確かな成長はもちろんのこと、激しい楽曲の中に憂いを込めた感情揺さぶるステージで観客を沸かしていく。Teru(gt)、Nob(b)、Kid’z(ds)の3人による、ジリジリと興奮を煽るサウンドから1曲目『ALONE』へ。少年性を残すHiro(vo)の凛とした歌声は屈強なサウンドに絶妙なギャップを感じさせ、妙な色気と儚さを感じてしまう。続いて『新曲やります』と、7月リリースのアルバム『ALL LEAD TRACKS』から『REVIVER』を披露。静と動を交えた楽曲はオーディエンスの心をしっかりと掴み、楽曲が進むにつれて突きあがる拳の数がどんどんと増えていく。
MCでは音楽を続けるうえで感じてきた希望と絶望について口早に語り、すべてにおいて全力でぶつかっていく覚悟を伝え、次曲『monologue』へ進む。全身に重く響くKid’zのリズム、声を震わせ感情を絞り出すHiroの歌声に呼応するようにオーディエンスも全身で音に応える。さらに『メインステージの火付け役として呼ばれていると思う』とこの日のステージに懸ける思いを伝え、『虚言NEUROSE』ではドラマティックな楽曲で会場に一体感を生み出していく。その後も『Someday』『モノクロエフェクター』と続き、ラスト『不可逆リプレイス』へ。『1人じゃ何もできませんでした。このバンドと出会えたことで今がある。人生何があるかわからない。まだまだ足りない景色がある。ここにいる全員で最高の景色を作ってくれませんか?』と想いの丈を叫び、全力のステージングで全7曲を駆け抜けた。
text by 黒田奈保子
photo by 田浦ボン
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主催者のGREENS力竹氏とFM802DJ大抜卓人氏による挨拶で開幕。大抜氏に「地元大阪の特攻隊長!」と紹介されて、メンバー全員タオルを掲げて登場したのは2年ぶりとなるRAZORS EDGE。KENJI RAZORS(vo)による「ヘイホー!」の掛け声で、一気にフロアは盛り上がり、そのまま1曲目『TRAIN TRAIN TRAIN』へ。結果を言うと、持ち時間35分で14曲。とにかく超スピーディーで、ドカドカうるさい最高のハードコアサウンド。感じるというより浴びる…、キャリア21年のバンドが朝っぱらから、こんなライブをぶちかましているのが痛快すぎる。
『UGLY KID』では「ひとつ遊びやりましょ! 中心にサークルを作ってくれ!!」とKENJIが呼びかけるとフロアに3つのサークルが出来上がり、そのままモッシュ! ひとつ書いておきたいのは、常に細かく観客に対して怪我がないように呼びかけている事。ただ単に暴れて騒ぐのではなく、しっかり冷静な視点を持っているのは誠に素晴らしかった。
終盤の『LIVINGDEAD』では「日本最高のライブハウス十三ファンダンゴに負けないフロアを作ろうぜ!」と叫び、フロアまで降りて、KENJIは観客の上に立ち歌う。ラストナンバーは2年前と同じく、シンプルでキャッチーな『MOUNTAIN MOUNTAIN MOUNTAIN』。2年前と同じく、KENJIは観客の上を転がりながら、フロア後方のPA卓まで運ばれ、そして折り返すかのようにステージへとまた戻っていく。いつも通り全力で楽しませるという何も変わらない事の凄みを、トップバッターの彼らは魅せてくれた。
text by 鈴木淳史
photo by Yukihide"JON..."Takimoto
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