今年の『RUSH BALL☆R』のトップバッターを飾るのは、昨夏、平均年齢19歳でメジャーデビューを果たした堺出身のロックバンド、Shout it Out。無骨で粗削りなサウンドはザラついた質感を残しつつ、ひたすらに突き進む決意とガムシャラ感が心を打つ。誰しもが感じる不安や葛藤、そして兆し。その先に光があることをエッジの効いた楽曲群が証明してくれているかのようだ。しかしながらキレイごとばかりではない、生きていく上で、特に青く若いがゆえに抱く心の叫びを、秀逸な歌詞とメロディセンスで大人にもきちんと届かせてくれるのだから、その才能には目を見張る。どことなく漂う緊張感すら刺激となり、瑞々しい感性と未知なる可能性が未来へと繋がる確かな足跡を刻み込んだ。
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2番手に登場は、「誰も一人ぼっちにしない音楽」をコンセプトに心に寄り添うサウンドを聴かせる、名古屋発のロックバンドTHE BOY MEETS GIRLS。ユーモア溢れるリリックに軽快で無垢なボーカル、華やかながらなぜか心地よさと懐かしさも感じるサウンドに心ごと踊らされるよう。まるで音楽でコミュニケーションをとるような優しさに満ちた楽曲群とメンバーの楽しそうな姿が、自然と会場に笑顔を生み出していく。「昼間から遊んじゃってもいいんじゃないですか~」(高島・vo&g&key)と披露された、『スベスベマンジュウガニは静かに笑う』や『きみいろクレヨン』では、オーディエンスも振付しながらレスポンス。「今日だけは誰も一人ぼっちにならない一日になるよう、最後に一番ハッピーな曲をやります!」(高島)と『おさるのジョニー』を。夏を呼び込むトロピカルなサウンドになんとも愛くるしい”バナナ、バーナナ♪”のダンスが、これでもかと言わんばかりの幸せな空間を生み出していた。
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「野音で初めて演奏させてもらって気持ちがいいです。昼とか似合わないバンドかもしれませんけど精一杯演奏して帰ります!」(白井・b)と次なるアクトは、ギターロックバンドHalo at 四畳半。疾走感みなぎるサウンドに透明感とハスキーさを併せ持つ耳馴染みの良い渡井の歌声が乗り、炎天下の中でのステージにも関わらず心地よさを体感させてくれる。ライブの臨場感が加わり、体の芯により直接響くようなバンドサウンドがオーディエンスの心をどんどん惹きつけていく。「音楽は好きなところでトリップできる魔法みたいなものです。またこの場所を目指して音楽を続けていこうと思います」(渡井・vo&g)と、全身全霊の『シャロン』では、その熱のこもった演奏に、こちらの拳にも力がみなぎり、気づけば前のめりに。ロックの持つ強さ、壮大さ、そして繊細さをきちんとアウトプットできる正統派バンドの底力に、さらなる活躍を期待せずにはいられなかった。
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切なさと憂いを帯びた色気を感じる歌声。続きましては、Ivy to Fraudulent Gameがステージに。差し伸ばす手の先に光が見えるような感覚。熱さの中に冷静さを保ち続ける魅惑的なサウンド。「いつもライブハウスで活動していますので、こういう野外はめったにありませんが、いつも通り最高のロックをやって帰りたいと思います! 何を見に来たか分かりませんが、圧倒的なパフォーマンスをして虜にして帰りたいと思います。この4人で鳴らしてる以上、負ける気がしねぇー!」(寺口・g&vo)と叫ぶ姿も様になる。なんとも絵になるバンドだ。ゾクッとするほどエモーショナルで秀逸なロックサウンドに魅入らされ、野外だということを忘れさせる圧倒的な音圧と存在感が観る者に衝撃を与える。危うさを孕んだ唯一無二のオリジナリティとロックバンドとしての毅然さを兼ね備えたカリスマ性を感じるバンドだった。
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「新進気鋭のバンドにまじってオジサンが出てきちゃったんですけど」(村上・vo&g)と自虐的なMCでも一瞬のうちに観客の心を掴むのが巧み。結成9年目のロックバンド・テスラは泣かない。が3年ぶりに『RUSH BALL☆R』のステージへ!! 1年間活動を休止していたベースの吉牟田の復活後、初の大阪ライブとなったこの日、メンバーのステージングもフルスロットル。力強く軽妙な鍵盤の音色が高揚感を駆り立て、コーラスの一体感にも心奪われる。シンプルながら、色濃くドラマティックなサウンドに自然と身体が動かされる。さすがのチームワークというべきか、オーディエンスの乗せどころを心得たステージング、品がありながらも衝動を併せ持つジャムセッションのようなパフォーマンスで、キャリアが物言うワンランク上のステージを魅せつけてくれた。
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夏にぴったりなシュワっとした爽快さを感じさせてくれる甘酸っぱい“炭酸系ロック”が持ち味。昨夏の『RUSH BALL 2016』に続き、今年は『RUSH BALL☆R』に一足早い夏を届けに登場してくれたサイダーガール。音楽に馴染みのない方にも聴きやすいだろう、キャッチーかつ疾走感溢れる楽曲は、この日の澄み切った青空にも絶妙にマッチする。切なさを駆り立てる繊細なサウンドメイクが、刺激と儚さを生み出しそして聴くものに自由に風景を描かさていく。7月26日(水)リリースのメジャーデビュー曲『エバーグリーン』の披露もあり、ラストの『ドラマチック』が披露される頃には席から立ち上がり、拳を上げる観客の多いこと! 何色にでも染まれる純真さ、そしてみずみずしいバンドの姿に、さらなる可能性を観たようなアクトだった。
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そしてようやく暑さも落ち着きだした頃に登場したのは、今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで人気上昇中のポルカドットスティングレイ! 雫(vo&g)のキュートなルックスからは意外性すら感じる、わざと大人になりきらないような質感を帯びた艶っぽい歌声。「みんな楽しむ準備はできてるかしら~?」とちょっとS気質なMCにも中毒性が垣間見える。そんな魅力全開のボーカルを支えるかのように放たれる色とりどりの安定感のあるバンドサウンドに、時に酔い、時にテンションを上げ、コールに応えるオーディエンスたち。ラストにPVが200万再生を突破したという『エレクトリック・パブリック』を披露する際には、歌詞にある「~せい? YES!」でレスポンスがし易いよう、パネルを手にした“セイ イエスマン”も登場。盛り上がらないわけがない。ライブのツボを心得たインパクト大のステージだった。
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本日のMCである大抜卓人の呼びかけ後、「お待たせしました、cinema staffはじめます」(三島・b)の掛け声のもと、大人気アニメ「進撃の巨人」エンディング曲『great escape』からドラマティックにスタートした大トリのステージ。剥き出しの感情と衝動が入り混じりつつも、卓越したテクニックで誘うように滑らかに耳へ導いていくロックサウンドは、魂から揺さぶるような音。それもそのはず、「先ほどのMCで大ベテランって言われちゃったんで、めちゃくちゃ緊張してたんですけど、気持ちはヤングで挑みたいと思います(笑)」(三島)と語らせる、結成14年の実力派だ。攻撃的でエネルギッシュなパフォーマンスにダイナミックな音圧、飯田の伸びやかでまろやかな歌声、そして各パートの色を尊重しながらも絶妙に絡み合うアンサンブルが、これでもかと大観衆を魅了していく。『exp』では会場が一体となり大合唱、そしてラストは、困難に立ち向かう勇気すらみなぎるような、希望に満ちたスケール感が清々しさを与えてくれる『希望の残骸』でシメ。最後まで惜しむように歓声を送り続ける大観衆の熱気に包まれながら見事に締め括ってくれた。
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